学校生活を自分たちの手でスマートに 〜圧倒的当事者意識でグランプリ/岐阜県立土岐商業高等学校
岐阜県立土岐商業高等学校は、創立70年を超える歴史を誇り、「質実剛健・明朗闊達」の校訓のもと、地域に根ざした教育を実践する伝統校。高度な専門性を追求する「ビジネス科」と「ビジネス情報科」を有し、簿記会計からITスキルまで、時代のニーズに応じたきめ細かな教育を展開しています。国家資格である情報処理技術者試験の合格者も多く、SEやプログラマーなどの即戦力人材を多数輩出するほか、大学や専門学校で公認会計士を目指す生徒もいます。文武両道の精神にもとづく校風で、全国レベルの部活動も盛んです。
同校では、アシアル株式会社が主催する「第3回全国商業高校Webアプリコンテスト」に、3年次の授業の一環として取り組み、見事グランプリを獲得しました。今回は、指導にあたられた河村 憲彦教諭と、グランプリ作品「南陵コム」の開発チーム「プロジェクトコム」の3年生、丸谷 竜輝さん、小栗 琉聖さん、水野 堪太さんの3名に、その開発の経緯と想いをお聞きしました。(2026年2月インタビュー)

岐阜県立土岐商業高等学校
1年次からの積み上げと「3年生の背中」/アプリコンテストへの道のり
アプリコンテストへの参加の経緯を聞かせてください。
河村教諭:ビジネス情報科システム管理コースの3年次の授業で以前から「Monaca Education」を活用しており、その中で「全国商業高校Webアプリコンテスト」がスタートした第1回から参加してきています。毎年、コースの全員の生徒が取り組んでいます。
具体的にはどのように授業でコンテストに取り組んだのでしょうか?
河村教諭:3年次の「課題研究」「ネットワーク活用」「ネットワーク管理」という授業で9月から12月の3ヶ月間ほどをかけてコンテストに向けたアプリ開発に取り組みました。
ただ、プログラミングの基礎は「プログラミング」の授業で1年次から習得し、関連する検定を受験するなどしてプログラミングスキルや知識を確実なものにしています。
さらに大きいのは、上級生に当たる3年生がこのコンテストに向けて開発したアプリ、卒業制作で開発したアプリを、1、2年生に向けてプレゼンする機会です。
自ずとアプリ開発への心構えができます。2年次の終わりには次年度の挑戦を明確に伝えますし、昨年度は、先輩が「技術賞」や「デザイン賞」を受賞しており今年のモチベーションにもつながったと思います。
また、生徒自身がコンテストで扱うアプリの企画、アプリで解決したい困り事を3年次の夏休みの課題に設定しています。
Monaca Educationを活用して
具体的にどのような教材を使いましたか?
河村教諭:学習プラットフォームとしては「Monaca Education」を活用し、3年次9月のはじめにアシアルさんの公式テキスト「JavaScriptで学ぶプログラミング入門」を用いてプログラミングを学びました。さらに具体的なDB(データベース)連携手法などは「あんこエデュケーション(アシアル情報教育研究所 が提供するプログラミング教育で活用できるサンプルアプリサイト)」を活用、改造方法などみっちりと学習しています。

左から河村 憲彦教諭、システム管理コース 3年生 小栗 琉聖さん、丸谷 竜輝さん、水野 堪太さん
「Monaca Education」を使ってみてどうでしたか?
水野さん:授業でずっと使っていますが、Monaca はサイト1つでHTML(Webページの構造を作るマークアップ言語)、CSS(見た目をデザインする機能)、JavaScript(アプリを動かすプログラミング言語)と連携ができますし、Monaca の開発者ツールではDBも利用できてとても便利です。特に僕たちが開発した「南陵コム」というアプリは20近いDBを利用していますから開発の効率が上がりました。
丸谷さん:アプリ開発を進めるとデバッグ(不具合が生じた時に原因を特定し改修するための工程)が必須になるのですが、Monaca の開発者ツールではどこにエラーがあるのかが参照できますし、またエラーコード(エラーを識別する番号)の検索機能もありデバッグの効率がとても良くて助かりました。もう1点、開発しながらアプリをプレビューできる点もとても便利でした。
生徒会と生徒の困り事を解決/「南陵コム」が生まれるまで
丸谷さん、小栗さん、水野さんの開発した「南陵コム」はグランプリを獲得しました。
おめでとうございます!どのようにプロジェクトが始まりましたか?
丸谷さん:ありがとうございます。先生から結果を聞いてその場で皆でハイタッチしました!達成感を得ています。
僕は生徒会長を務めていて、生徒会活動の中で書類の処理に不便や手間を感じていました。スマホを使ったシステムで解決したいと日頃から思っており、昨年上級生がアプリコンテストへ挑戦する姿を見て、僕も3年生になったら学校の課題を解決するアプリを作ろうと既に決めていました。
小栗さん:僕は生徒会役員ではないのですが、ずっと仲の良い二人(丸谷さん、水野さん)が生徒会活動をしていて、この開発チームに誘われました。
水野さん:僕も生徒会役員で、書類や行事の管理がアナログで煩雑、不便だなと感じていました。最初は一人で学校アプリを作りたいと考えていました。とにかく実用性のあるアプリを開発してみたかったのです。プログラミングは、便利なアプリを開発できることに魅力を感じていました。
グランプリに輝いた「南陵コム」を紹介してください。
水野さん:南陵コムは日常から行事まで幅広く使える学校アプリです。実際に、文化祭で全校生徒400名程がログインし使いました。
また、交通情報や気象情報など毎日を便利にする機能も搭載しています。
実は学校の最寄り駅の電車は1時間に3本という状況です。そこで次の電車までの時間をリアルタイムに画面に表示して、生徒の皆さんに毎日使ってもらっています。
デザイン面も統一感があって素晴らしいですね!
水野さん:僕が担当しました。ありがとうございます。

「南陵コム」アプリ画面
左上: 直感的な操作を可能にするホーム画面。 右上: 文化祭行事のキッチンカー商品一覧画面(売り切れ情報や混雑状況を周知)。 左下: 常に最新の情報を届ける気象情報画面(API連携により取得)。 右下: 交通情報画面(電車の出発時刻を保持し、残り時間を自動更新)。
「行事のしおりが周知されない」「検定結果の確認が手間」「次の電車の時間を知りたい」といった学校生活のリアルな課題や要望を解決するために、様々なアイデアを盛り込み開発されたのが「南陵コム」です。 技術的にはWeb API(アプリ同士を連携させる窓口となる仕組み)やJSON(ジェイソン:情報のやりとりのための統一されたフォーマットのひとつ)、20ものDB(データベース)との連携などが使用されていて高度。機能面の圧倒的な網羅性はもちろん、ブランドカラーで統一されたデザインなど、ユーザビリティにも配慮された完成度の高いアプリです。
コンテストの結果発表はこちらをご確認ください。2>
チームだからできたこと/「衝突」が最高のアプリへ
チーム形成や役割分担についてお聞かせください。
丸谷さん:このチームはプログラミングが得意で長けているメンバーなのです。僕は、主にアプリの叩き台作りとなる設計部分、意見をまとめる役割と進捗管理を担当しました。
水野さん:僕は交通情報や気象情報部分の開発に力をいれました。気象庁のサイトを参考にしてAPI連携で開発しました。技術的な難易度が高くて苦労もしましたが、「あんこエデュケーション」のサンプルコードも参照し、自力で取り組みました。Claude.ai(クロードAI:プログラム開発のサポートに適したAI)も活用できるところは使いました。
小栗さん:僕は特に文化祭の「キッチンカー」機能にこだわりました。保護者会がキッチンカーを手配し当日の運営も手伝います。僕の父が保護者会の活動をしているので実際のリアルな声をヒアリングしました。具体的にはメニューの売り切れ情報や混雑状況を一覧できるようにしました。文化祭当日は雨だったので、一層好評をいただきました。

PCに向かう、丸谷さん、水野さん、小栗さん(左から)
チームならではのご苦労もあったのではないですか?
丸谷さん:作りたいものの方向性が違うことでぶつかったり、「やっておいてね」とお願いしたところが何も進んでいなくてギクシャクすることもありました。
僕が間に入って双方の話をしっかり聞くことで進めていきました。衝突なく進むのが理想かもしれませんが、それぞれに想いがあっての衝突でしたから、それを経たからこそ良いアプリになったと今はそう思っています。
受験や進路など、大変な時期とも重なったのではありませんか?
小栗さん:はい。僕は9月に入試があって、さらにアプリ運用の1週間前には二次試験の面接もありました。かなりハードでしたが、「この期間はできない」と2人に正直に伝えて、協力してもらいました。
チームでの開発だから無理なく最後まで完走し最高のアプリになったのですね。
技術力だけではない。計画性、コミュニケーション、表現力が身につく学び
先生からご覧になって生徒の皆さんがコンテストに挑戦する様子をどうお感じになりましたか?
河村教諭:生徒は皆、非常に頑張ってくれたと思います。今年の取り組みの中で生徒たちが成長する様子を目の当たりにしました。
ただ単に作品制作というだけでなく、外部のコンテストに挑戦するということは表彰や外部の方の審査もありますし、生徒のモチベーション向上に大きく寄与したと感じています。
特に「全国商業高校Webアプリコンテスト」は、ゲームなど趣味の作品ではなくて身の回りの課題解決というテーマ設定も素晴らしいですし、プレゼン動画を制作してエントリーするのも良い点です。コンピューターを学ぶ生徒は制作は好きだが、発表に苦手意識を持つ子も多いものです。技術力だけでなくて計画性やコミュニケーション、表現力が身につくのが素晴らしいですね。
制作を進める過程で工夫されたことはありますか?
河村教諭:3ヶ月と制作期間が長いので、なんとなく作らずに計画をしっかり立てるように指導しています。「授業日誌」として週次の報告と次週の予定、課題と改善方法をExcelファイルで提出させ計画性を育みました。
今後の展望/挑戦は続く、実社会で活きる学び
今後の展望をお聞かせください。
河村教諭:現1、2年生にも結果を共有しており、来年度も3年生がコンテストに挑戦する予定です。また、今年は文化祭と重なってしまってアシアルさん主催の現役エンジニアの方や大学生メンターの方によるアプリ開発の相談会に参加できませんでした。来年は参加したいと思っています。
今後の要望として「南陵コム」のように非常に優れたアプリは、彼らが卒業しても継続して実践的に使いたいという思いがあります。
コンテストへの参加を検討している先生方や生徒さんへのメッセージをお願いします。
河村教諭:生徒の皆さん次第かとは思いますが、本当に少しでもプログラミングに興味があるのであれば、コンテストを「きっかけ」として活用するのが良いのではないでしょうか。「きっかけ」を与えれば生徒は頑張るものなので、ぜひ挑戦していただきたいです。
実は私自身も、学生時代はプログラミングの経験がなく、授業を担当するために一から独学で覚えた身です。だからこそ、挑戦する不安も、それを乗り越えた時の喜びも分かります。
まずはサンプルコードの改造からでも参加は可能なので、少しずつ、ぜひ挑戦してみてください。
最後に生徒さんへのお言葉をいただけますか?
河村教諭:素直に「おめでとう」と言いたいです。これで終わりでなくこの知識やコンテストを通じて学んだことは将来の進路で活かしてください。プログラミングや技術力だけでなくチームでの協力や計画性、取り組み方など、この先出会う全てのことにつながるので、ぜひ活かして欲しいと思います。
河村先生、丸谷 竜輝さん、小栗 琉聖さん、水野 堪太さん、本日はありがとうございました。
アシアルは、「Monaca Education」「全国商業高校Webアプリコンテスト」をはじめとするプログラミング教育事業を通じて、これからも中高生の学びと未来の実現を全力で支援してゆきます。共に新しい可能性を切り拓いていきましょう。
岐阜県立土岐商業高等学校 商業科教諭。主に情報系科目を担当。教員歴18年、同校赴任4年目。

